おりものの異常について
おりものは、生理期間や妊娠中以外の時期に女性の性器から分泌される粘液のことで、膣を通して体内に細菌が入らないようにする、性行為をスムーズにしたり妊娠しやすい状態をつくったりするなど大切な働きをしています。
おりものは、人それぞれで千差万別なのですが、その色や量、匂いなどにいつもと違った様子がみられるときは、何らかの病気を疑う大切なサインとなります。たとえばチーズや酒かす状であったり、色が茶褐色や黄緑色であったり、また悪臭がするなどの場合には病気の可能性があります。
考えられる原因
おりものの状態が変化する原因としては、女性ホルモンの分泌の変化からくるものと、性感染症(STD)や良性・悪性の腫瘍など疾患によるものに分けられます。
女性ホルモンの変化によるもの
卵巣から分泌される女性ホルモンによって生理周期がコントロールされているように、おりものも女性ホルモンの影響を受けて周期的に量が変化しています。
ホルモン分泌が盛んな20〜30代にはおりものの量も多くなり、経年とともに減っていきます。閉経後はおりものはごくわずかしか見られなくなります。
また、ストレスや生活習慣から、卵巣機能が低下し、膣内をきれいに保つ作用が弱まると、炎症をおこしてしまいおりものに変化がみられることがあります。
疾患が原因のもの
代表的なものが性感染症と子宮頚がんやポリープなどの疾患です。
性感染症のおもなものには、膣トリコモナス症、クラミジア感染症、淋菌感染症などがあげられます。
女性の場合、これらの性感染症で症状が強くあらわれることは少ないのですが、おりものの量や臭いなどに変化があらわれることもあります。性行為等思いあたることがある場合には、診断をうけてください。この際、パートナーがある場合はパートナーも受診し治療をうけることも大切です。
良性や悪性の腫瘍、炎症などによる疾患としては子宮頸管ポリープ、子宮頸管炎、子宮がんなどがあげられます。
性器クラミジア感染症
女性の性感染症としては最も多い疾患です。女性の場合強い症状がでないことが多く、黄色いおりものが多少増える程度です。症状が進行すると、下腹部に痛みを感じたり性交通を感じたりします。
外陰膣カンジダ症、カンジダ性膣炎
もともと膣にいるカンジダ菌が増殖し、性器が腫れて赤くなる、ただれるなどの症状とともに、強いかゆみを引き起こします。チーズや酒かす状の白いおりものが出ます。
淋菌感染症
感染後数日で外陰部にかゆみを感じおりものが多少増えます。はっきりした症状が出ず慢性化することもあり、放置すると炎症が尿道や膀胱に拡がります。妊婦が感染した場合、新生児に結膜炎を起こし、失明に至るリスクがあります。
膣トリコモナス症
性交によって寄生虫に感染し炎症を起こす疾患ですおりものの量が増え、性器に強いかよみを感じるようになります。進行すると泡のある黄色で強い臭みのあるおりものが出ることが特徴です。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管とよばれる子宮の入り口にポリープができる疾患です。ポリープはきのこのような形をした良性の腫瘍です。おりものが茶褐色になり、また量も増えてきます。性交後や、排便時にいきんだ時、スポーツなどのあとなどに少量の出血が少量みられることがあります。
子宮頸管炎
子宮頸管が細菌感染によって炎症をおこします。黄色や黄緑色で強い臭気のあるおりものが出ることがあります。大腸菌やブドウ球菌のほか、クラミジアなどが原因菌となります。症状が強い場合には下腹部の痛みや腰痛があります。炎症が子宮や骨盤に広がると、発熱や嘔吐などを引き起こします(子宮内膜炎、骨盤腹膜炎)。
子宮頸がん
子宮頸部のがんで、性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因で発症します。初期症状はほとんどありませんが、進行するとおりものの色が茶色っぽくなることがあります。また生理期間が長くなったり、性交時の出血や不正出血をしたりするなど症状がみられることもあります。
子宮膣部びらん
子宮の入り口がなんらかの原因でただれるのが子宮頸部びらんです。おりものが増える、性行為後に出血するなどの症状がみられることもありますが、多くの場合、自覚症状はみられません。びらんが発症すると周辺の抵抗力が弱まり、細菌に感染する可能性が高まり、他の病気を誘発することもあります。また症状としては、子宮頸がんの初期症状と似ていることもあります。自覚症状がある馬合は、婦人科の専門医を受診する必要があります。
予防法
おりものに変調をきたす原因は女性ホルモン変化と子宮周辺の疾患です。
おりものに、量・色・周期などの変化がみられるときは、放置せずに婦人科の専門医を受診することが大切です。放置すると慢性化することや、深刻な疾病の兆候を見逃すこともありますので、早めに受診するようにしましょう。
また、性感染症の予防の第一はコンドームの使用です。コンドームで防ぎきれないものもありますが、パートナーにも理解を得て、ともに感染症を予防していく意識が大切です。
子宮頚がんは若い女性に多く見られますが、早期に発見すればほぼ100%の確率で治癒します。初期症状があまりないために気が付いた時には進行してしまっているということも多々あります。年に1度の定期検診で早期発見に努めましょう。